女神が宿るイチョウ
一本のイチョウの樹木の中に、一人の女神の姿を見た。
清らかな姿、凛とした鋭い瞳。さらさらと長い髪が風に舞い、白いドレスも風になびく。
樹木の中央に女神は立ち、私たちを迎える。両手をこちらに差し伸べて、「よく、いらっしゃいました」とでも言うように。
さわさわと優しい風が吹く。芽吹いたばかりの葉は柄が長く、しなやかに揺れている。
こんなに優雅に、ゆらりゆらりとふるえるように揺れるイチョウの葉を見たのは初めてだった。美しい!美しい! ファインダーをのぞくたびに、思わず「美しい」と何度も声をかけてしまった。
樹冠はダイナミック、幹はゴツゴツとして太く力強く、街路樹のイチョウのように整った形はしていない。枝々は縦横無尽に伸び、太古の生命エネルギーを感じさせる。
イチョウは、二億五千年前からこの水の惑星に存在し、生きた化石と呼ばれる生命である。最近の研究で、その遺伝子(DNA)は当時から全く進化していないことが証明されている。
さいたま市の真福寺の墓地内に立つ、逆さイチョウ。
枝から乳柱がたくさん垂れ下がっているために、“逆さ”と名づけられている。これはイチョウ独特の姿であり、乳房のように見えることから、母なる神が宿っていると言い伝えられる。それを裏づけるように、日本の民話には、母乳の出ない母親の代わりに、イチョウの精霊が赤ちゃんにお乳をあげるという話が全国にある。
この墓地に眠るすべての人を見守るように、イチョウの女神は立つ。墓参りに来た人々がやがて墓に入る時も、来世へ旅立つ時も、再びこの地上に生まれる時までも・・・・・。
●真福寺の逆さイチョウ
埼玉県さいたま市南区別所2-5-14
樹高18.5m 幹周り5.85m 推定樹齢数百年
市指定天然記念物
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