Diary in
Czech 6~Lime
tree&Grandma

べナトキ市でかけがえのない出会いがありました。菩提樹があまりにも美しくて、写真を撮ろうとてくてく散歩していた事のことです。
べナトキ城近くの公園に大きな2本の菩提樹が立っていました。若々しい緑色の一本と、もう一本は少し濃い緑色の菩提樹です。その前にベンチがあり、おばあさんが座っていました。杖に両手をたずさえ、静かにたたずんで…。
私はじゃましないように一人、写真を撮ったり、菩提樹の葉っぱに触ったり、幹に寄りかかったり、いつものように木とたわむれていました。すると、おばあさんが話しかけてきました。
ペラペラペラペラペラ、ペラペラペラペラペラ(チェコ語!)
……全然わかりません
でも手ぶりを見ると、「葉を触って、匂いをかいでみなさい」と言っているようです。そこで、花を顔を近づけると甘~い香りがしています。写真を撮るのに夢中でわからなかったのだけど、ほのかな香りがそのあたりに漂っていました。

またしても、ペラペラペラペラペラペラ、ペラペラペラペラペラ(チェコ語!!)
ぜんっぜん、わからなかったけど、おばあちゃんの目を見ながら、ずっと話を聞いていました。しばらくするとおばあちゃんは杖で身を支えながら、よっこらしょと立ちあがり、「ペラペラペラペラペラ!」。私にどこかに行こうと誘っているようです。
何かわからず戸惑っていると、近くにいた親子連れが「景色を見に行こうと、家に誘っているんだよ。行ってあげなさい」と声をかけてきました。「家から見た景色がとってもきれいだから、写真を撮れば?」と言っているよって。
え、今から? 知らない人の家に? 友達がべナトキ城で待っているのに? ああ、どうしよう…と思いましたが、おばあちゃんはもうどこかに向かいながら、私に目配せしています。もう、あと戻りはできません。

ゆっくりゆっくりと歩くおばあちゃんの後を着いて行くと、菩提樹のちょうど目の前に大きな木の扉がありました。おばあちゃんは鉄製の鍵を取り出しました。こんな大きな扉の、見ず知らずの人の家に入って大丈夫かしら?と不安がよぎります。
そんな私のことはお構いなく、おとぎの国のお城の鍵みたいな大きな鍵でがちゃがちゃと開け、ギギー。木の扉は開きました。天井の高い、トンネルみたいな暗い道、ちょっぴり不安を抱えて着いて行くと急に視界が開け、広い広いベナトキの町が広がっていました。
高台に家は立っているらしく、透けるような青い空が遠くまで見渡せ、赤レンガの屋根がいくつも連なっています。
ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンッ
突然、でっかい犬が2匹、突進してきました。
きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
犬に飛びつかれるかと思った瞬間、犬たちはすっと私の横を通りすぎ、おばあちゃんのもとへ。犬はおとなしくなり、もう吠えませんでした。

今度、現れたのはサスペンダー姿のお兄さんです。刺青してますっ!こわい顔して「なんだこいつ?」という目線。もしかして私、チェコのマフィアの家に来てしまったんじゃないかしら。ドキドキドキドキ。
「わ、わたしは日本から来ました。おばあちゃんに…景色がいいからって…連れられてきました…」と片言の英語で話すと、ぱっと笑顔になって、「どうぞ、お撮りください」というように大きく腕をあげて手招きしてくれました。まだ心臓はバクバクしてます。
うながされて奥に進むと、そこはなんと日本庭園! 灯籠あり、池あり、ここはどこ!? 眼下に広がる赤レンガ屋根と日本庭園の組み合わせがなんとも不思議。

「日本が好きなの?」とお兄さんに聞くと、「そうなんだ、日本スタイルが大好きで、自分がこの庭をつくったんだよ」と楽しそうに話してくれました。庭では彼の息子らしき少年が2人遊んでいて、そばには女性3人がくつろいでおしゃべりしていました。
「じゃあ、今からべナトキ城においでよ! 私の友達が剣術のパフォーマンスをするから!」と誘うと、「ああそれ、日本人が来るイベントだね」と一緒に来てくれるって言ってくれました。
彼の名前はマイケル。思いもかけない出会いから、私はチェコ人のお兄さんを連れて、友達が待つべナトキ城へと戻って行きました。(つづく
)

2本の菩提樹が立つちょうど目の前にマイケルさんとおばあちゃんのおうちはありました。
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