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2013年9月12日 (木)

スウェーデン日記11 神々の大地 ウプサラよ、さようなら Bye Uppsala

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帰りのバスはガムラ・ウプサラ博物館から歩いてすぐのところだ。木が生い茂り、しだれた枝葉が美しい緑のトンネルを作っているその下に停留所がある。到着時刻までには少し時間があったので、もうしばらく歩いてみることにした。

人がまばらになり、三つの墳墓が連なる丘は徐々に神の領域へと変わっていくように感じた。木も草も花も、空も風も水も、建物も教会も、すべてがひとつに溶け合っていく。約一千五百年も前の昔とあまり変わらないだろう風景は現代を生きる私たちのことも穏やかに迎えてくれる。しかし夕刻、空が藍色をおびていき、人間はそろそろここから立ち去る時がきたことを知らせる。私は三連の山をふり返りふり返りしながら、バス停へと歩いていった。
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線路を過ぎると、この場所にたどり着いた時のほっとした気持ちを思い出した。ここからもう去らなくてはならないと思うと寂しさがこみあげてきた。いつまでもいたい気持ちが募るがしかたがない。時間は刻々と過ぎ、私はこのウプサラからストックホルムまで帰らなくてはならないのだ。ぐずぐずしていると夜遅くなってしまう。
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緑のトンネルの下にバス停留所

バスはほどなく到着した。運転手にウプサラ駅に行くか?と尋ねると、ウプサラ駅から少し離れたところに停まることを教えてくれた。来る時に乗ったバスの運転手さんと違い、でっぷりと太ったおじさんだった。ガムラ・ウプサラからウプサラ中央駅までは約15分。広々とした緑の景色を目に焼きつけるように眺め、バスに揺られていった。

大通りに入り、車の数も多くなり、石造りの大きな建物が増えてきた。今までいた場所とはまるで違う。現世に戻ったかのようなにぎやかな街の風景が広がった。

ところで、一体どこで降りるのだろう? 一緒にバスに乗っていた女性の3人連れが運転手に聞いている。もしかして駅を尋ねているの? と思う間もなく、慌てて女性たちがバスを降りた。私は3人に向かって、「Uppsala Station?」と声を張り上げた。「そう! 駅に行くならここで降りて!」と眼鏡をかけた女性が大きく手を振りながら私に教えてくれる。「Harry up!」降りたとたん、バスは発車した。よかった、全く知らない場所に行ってしまうところだった。ほっと胸をなでおろし、眼鏡の女性にお礼を言う。すると彼女は「私たちもウプサラ駅に行くから一緒に行きましょう」と連れて行ってくれた。

バス停から駅まで結構な距離があった。一人だったら途方に暮れるところだった。日本から来たと伝えると、「ウプサラ好き?」と聞かれる。「ウプサラ大好き!また来たい」と答えると嬉しそうに笑った。彼女はウプサラに引っ越してきたばかりだと言っていた。もっと話をしたいと思ったが、ウプサラ駅が見えてきた。3人に手をふって分かれ、私は見慣れたウプサラ中央駅へと歩いて行った。

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駅の構内はとても可愛らしく、エレベーターにはカラフルな文字が描かれていた。こじんまりとした駅なのだが、明るく広々として見えた。
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ストックホルム行きの時刻を調べると、1741分。出発まで5分もない。もう少しウプサラ駅周辺を散策してもいいかと思ったが、背中を押されるようにして電車に飛び乗った。
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電車はすぐに動き出し、私はとたんに後悔した。ウプサラがあっという間に去っていく。慌てて電車に乗ることはなかったのにと思ったがもう遅い。風景は次々と変わり、ガムラ・ウプサラの小高い丘の面影もなく、ルーン石碑の思い出も遠くなっていった。

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19分、ストックホルム中央駅に到着。電車から降り、ホームを歩きながらまたもや後悔した。ストックホルムがあまりに都会だったから。素朴さの残るウプサラのほうがずっと好きだ。もう少しゆっくりと街を歩けばよかったと寂しさに包まれた。

素敵な店が連なるというストラトリィ広場Storatorget、フィリス川そばのフィリストリィ広場Fyristorg、アカデミガータン通りAkademigatanなど巡っていない通りも多い。いちばんの心残りは「リンネ博物館」に行けなかったことだ。植物の分類法を編み出した植物学者カール・フォン・リンネ(17071778)の住居や研究室が博物館となっている。約1300種類もの植物が栽培されている庭園【Linnetradgarden】もある。木々や草花を愛する私としては歴史あるその植物園に行ってみたかった。ウプサラ大学図書館で出会った女性、ソフィアさんもすすめてくれた素敵な場所(スウェーデン日記5)。次に来る時はウプサラ市内に泊まり、街中を散策しよう。リンネの植物園でゆっくりと草花と話そう。

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今でもウプサラの一日を思い出すとせつなくなる。すべての時間が愛おしい。いつかきっと、再びウプサラを訪れたい。

こうして、日本からスウェーデンに到着して翌日の旅の始まり、ウプサラひとり歩きは終わった。

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