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2013年9月 3日 (火)

スウェーデン日記8 神々の大地「ガムラ・ウプサラ」Gamla Uppsala

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赤い看板を過ぎると線路があり、線路を渡った左向こうがウプサラ博物館であった。奥には小高い山が三つ連なる墳墓遺跡が広がっている。ああ、無事にここまで来られたのだ。帰りのバスの時間を見ておこうと引き返し辺りを見渡すと、蔦に覆われ、木々のトンネルのようになった停車場があった。帰りはここにウプサラ中央駅行きのバスが到着するらしい。最初からこちらで降ろしてくれれば慌てふためくこともなかったのにと恨めしく思うが、路線の番号を見ると行きのものとは違うので、行きと帰りとではバスの発着場所が違うのだろう。単身旅行者にはわかりづらい。時刻表で19時くらいまでは定期的に出ていることを確認できたので、ガムラ・ウプサラを歩くことにする。

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「ガムラ」とは北欧の言葉で「古 Old」を意味する。つまり、古いウプサラ。4世紀から6世紀にかけて(一説には3~4世紀)、政治、経済、宗教など、スウェーデンの中心地であった。遠い昔、古代北欧の人々に崇拝されていた神様たちの神殿が立っていたという。いわゆるヴァイキング時代(8~11世紀)が始まる以前だから、オーディン崇拝が盛んになる前の時代の名残りか、神殿の中央に雷神トールを据え、左右にオーディンとフレイが彫られていたと伝えられる。当時、オーディンはまだ主神ではなかったのだ。

この墳墓は誰のものか? 古代北欧ユングリング王朝のスウェーデン王が住む居城があったとされる。中央の墳墓は父王Aum、東側にはその子であるEgel、西側は孫にあたるAdilsのものとされている。墳墓からは貴重な遺跡が数多く発掘され、博物館に展示されている。あとでゆっくり見に行こう。

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早く墳墓に登ってみたくて、三つの山を目指す。山へと向かう道は野の花が咲き、草が自由に伸びているが、山そのものは芝生を丁寧に刈ったような低い丈の草が生えているくらいだ。下から見た時はなだらかな山に見えたが、登り始めると思ったより急だ。少々足がすくむ。先に登った家族連れの歩くほうを目指して、草で足が滑らないように歩く。小さな兄弟が山の頂上で飛び跳ねている。ここは家族連れがとても多い。多くが若い親と幼い子供の組み合わせだ。山の上から見下ろすと清々しい緑のウプサラ平原が果てしなく続く。

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現在、神殿はもちろんのこと、建物はほとんどない。空と森、草原と野の花だけが、ただただ広がるここはスウェーデン人の原風景といわれている。まさにそのとおりなのだろう。かつて、神々がたしかにいたような、自然の中に宿る力を感じる。中央の王Aumの山で瞑想をした。目を閉じ、風を感じる。思いのほか強い。髪の毛がバサバサと揺れる。激しい風。しばらくして目を開けると、見わたすかぎり、緑豊かなのどかな風景。現代も、神々は存在しているのではないか。

庶民の味方として信頼されていた雷神トールが無敵の槌ミョルニルを片手に闊歩し、知識と詩の神オーディンが生命の賛歌を吟じる。富と豊穣の神フレイは惚れて惚れて惚れぬいて結婚した愛妻ゲルズと連れ添って、仲よく散歩する。そんな情景も、私たちの目に見えない時空では、今もあり得るような気がしてきた。

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私の前を金色の髪をした姉妹が手をつないで歩いていく。一つめの山から二つめの山、三つめの山へ。私も一緒に歩いてみたくなり、ついて歩こうとしたが彼女たちは足がとても早く、ついて行くことができない。山の先には黄色い花が咲きみだれる草原が広がる。女の子たちは花の中を歩きまわるのが楽しいらしく、ぴょんぴょん飛びまわっていて、いつまでもそこから出てこない。母親が名前を呼び、親子三人が一緒に歩き始めるとみるみる小さく遠くなっていき、いつの間にか消えてしまった。現実のことなのか、それとも、ガムラ・ウプサラの風が見せてくれた幻影だろうか。

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★ガムラ・ウプサラの行き方
ウプサラ中央駅から市バスで110番、115番でガムラ・ウプサラ下車。所要時間約15分。バス停から徒歩約5分


2013.7.2




















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コメント

ついに北欧神話の原点ですね!
北欧に住んでいても、とても体験できるような場所ではないので、本当によく頑張っていらっしゃったものだと感心しています。
情熱あってこそですね~

ルーン石碑との出会いは貴重な体験ですね。
絶対に石碑に呼ばれたのだと思いますよ。


投稿: ノルウェーまだ~む | 2013年9月 4日 (水) 17時25分

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