芸術

2019年7月12日 (金)

「100年前の東京と自然」in 国立科学博物館

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もう終わってしまったのだけど、心に残った写真展。国立科学博物館での「100年前の東京と自然」。植物学者A・H・ウィルソンが撮った木の写真です。麻布・善福寺のイチョウ、小石川植物園のサクラなど、1914年の木の姿と現在の木とが並べて展示してありました。現在とほとんど変わらない木もあれば、今はもうない木、木はあるが周囲が様変わりして、昔の面影を感じられない木など、100年という時の流れが写真で表現されていました。

とくに心に響いたのはウィルソンが残した言葉。

「もし写真や標本で記録を残さなかったならば、100年後にはその多くは消えてなくなってしまうだろう」(1920年)

広島・長崎で被爆樹木の撮影、取材を続け、記録を残すことの重要さを感じた内容でした。誕生日の早朝、見に行って本当によかった。

撮影したアーネスト・ヘンリー・ウィルソン(1876ー1930)はあの屋久島の巨大な切り株「ウイルソン株」を発見した人です。10年以上前、屋久島でウィルソン株の中に入った感動を思い出しました。切り株だからもう命はないはず、でも、この木には神が宿っている、、、と確かに感じた杉の木でした。

★企画展「100年前の東京と自然-プラントハンター ウィルソンの写真から」国立科学博物館にて、2019年6月16日まで。
https://www.kahaku.go.jp/event/2019/04wilson/

写真上:ウィルソン株の声を聴く。下:ウィルソン株の中。

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2019年7月 1日 (月)

根津美術館で静かな時間

水の流れる音しかしない。時々、ししおどしの音が響く。表参道の根津美術館にある日本庭園。都会の真ん中にいるとは思えない静けさに、しばらく目を閉じて、耳をすませていました。

展覧会場では「はじめての古美術鑑賞ー絵画のテーマ」。奈良時代から江戸時代まで、歴史をたどりながら、日本人が絵の中に何を描き、どう表現をしてきたか、わかりやすく展示してありました。

自然を描いた絵の多くは、吉運をもたらす画題の組み合わせで描かれ、植物や動物のシンボルを知ることができました。茄子とごぼう(根菜)で「子孫繁栄」、葦とカニで「立身出世」etc.花や木のシンボルは西洋絵画を中心に考えがちですが、日本の絵画で探してみようと、シンボル研究に新たな楽しみを見つけた1日でした。

かわいかったのは、「源氏物語」のお姫様たちが大きな雪だるまを作っている17世紀の絵

最も惹かれたのは1人の僧が立ちつくす姿の墨画。絵を見ていると、体がすーっと鎮まっていくよう、、、瞑想をしている時のような静かな静かな感覚になっていきました。あとで解説を読むと、室町時代(16世紀)に描かれた「出出釈迦図」。断食等の長い苦行の末、釈迦が悟りを得ることを諦め、山を降りる決心をした絵でした。いわば自らに挫折をした釈迦の姿ですが、修行の末に得たものは決して無にはならない、内に蓄積されていくだろう、その過程の姿ではないかと感じました。この後まもなく、尼連禅河(ガンジス川の支流パルク川)に赴いた釈迦は菩提樹の下で悟りを得たとされています。この絵のほかにも、達磨に慧可が弟子入りを頼む「達磨慧可対面図」「寒山拾得図」「百衣観音図」等、禅の思想、瞑想を学ぶ人にお勧めの絵画が多くありました。

★企画展「はじめての古美術鑑賞ー絵画のテーマ」 根津美術館(表参道駅から徒歩約10分)にて、77日まで。

http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

 

 

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2019年6月25日 (火)

クリムト展に物申す

「クリムト展」へ行きました。忘れがたいウィーンへの旅、ベルヴェデーレ宮殿で、初めてクリムトと出会った時の感動をもう一度味わいたい!と出かけたのですが、なんで、こんなくすんだ壁にクリムトの絵を、、、(涙)ねずみ色とか暗い緑色とか、クリムトならではの輝きが沈んで見えます。ベルヴェデーレ宮殿では、クリムトの絵は黄金に光り輝いていました。室内装飾が美しい部屋の壁面に飾られて、その荘厳さと共鳴し合うように、絵の中の金色も、額縁の金色も、黄金色に光を放って、こちらに迫ってくるようだったのです。とくに、有名な「ユディトⅠ」。壁面を暗い色にしたのは、絵そのものをよく見せようという配慮なのかもしれませんが、クリムトの輝きを表現するにはあまりに暗すぎる、と残念に思いました。今回、いちばん心に残ったのは会場を入ってすぐの、横顔の少女像「ヘレーネ・クリムトの肖像」。白い服を着た少女のやさしい表情に心救われるようでした。
これからクリムト展に行かれる方は、本来は黄金にあふれる宮殿の美しい部屋の中に飾られていたと想像しながら、ご覧ください♪
そうそう、最後の1枚にも疑問。クリムトが描いてきた、生きる喜び!自然の輝き!を感じながら、会場を後にしたかったなあ。彼のテーマ「生命の円環」の最後を飾る作品としてなのか。円環ならば、やはり生の誕生で、新たな生命循環を感じさせる絵で締めくくるべきではなかったか、と私は思います。クリムトのめぐりゆく円環の中に身を置いて、会場を去る、、、という演出。
過去最多というこのクリムト展。ほとんどの絵を提供したベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の学芸員たちは「No!こんなの私たちのクリムトじゃない!」と言わなかったんだろうか、、、。
それにしてもクリムト・グッズの豊富さには驚きました。展示の工夫より、お金とアイデアをこちらに注いでしまったのね。と、クリムト展に物申しつつ、2回も見に行きました。
★19世紀末のウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)の25点以上の油彩画を集めた「クリムト展 ウィーンと日本1900」東京都美術館(上野)にて7月10日(水)まで。

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2019年2月23日 (土)

顔真卿に埋没する日々

まもなく終わる顔真卿展、楽しみました。東京国立博物館にて、明日24日、日曜日までです。台北の故宮博物院から初来日した「祭姪稿文(さいてつこうぶん)」もよく観ました。ああ、名残惜しい。
21日(木)は、開場前に到着したのに行列で、入場まで5分待ち。「祭姪稿文」まで10分待ち、もう一度観たいと後ろに並んで、2往復。
22日(金)は、故郷から上京した友人を連れ、11時着と出遅れ、入場まで60分待ち。「祭姪文稿」まで80分待ち、見納め。
会期中3度通った顔真卿展。初日開場と同時に入り、12往復・21日2往復・昨日1回で、計15回「祭姪稿文」見ることができました。悲しみ憎しみの感情がそのまま現れた行書の最高傑作。唐時代、安史の乱で惨殺された甥の追悼文の下書き。最初、顔真卿は冷静に書き進めますが、徐々に悲しみの感情が高ぶり、書き損じ、墨でぐるぐる塗りつぶして書き直した跡が残る、生々しい書です。
明日、最終日に行かれる方は開場前に到着することをオススメします!「祭姪稿文」の他にも優れた書が数多く展示されています。漢字の始まり、甲骨文から書の歴史がよくわかる展示。書道をしてない人でも、空海、聖武天皇、嵯峨天皇、玄宗皇帝、則天武后などなど、歴史上の著名な人物の書に注目、すばらしかったです。
今日はこれから、私が所属する天真書法塾の作品発表会なので、受付のお仕事に向かいます。書って、本当にいいなあ。8年ぶりに稽古を復帰して、書に邁進する日々、幸せです。

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2019年2月 4日 (月)

2019.1.12トークイベント報告「北欧神話を紡ぐ」with仙波るいさん

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【トークイベントの報告】

「仙波るい個展 紡戯ごと~北欧神話を紡ぐ」トークイベント
日時:2019112(土)15:00~

場所:
CASEギャラリー(代々木八幡or代々木公園駅)

1月、アーティストの仙波るいさんと行ったトークイベント、とても楽しい会になりました。

「北欧神話」をテーマにつくられたテキスタイル・アート。るいさんの作品に描かれた女神さまや動物たちの物語を11つご紹介しながらお話ししました。

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写真は、宇宙樹ユグドラシルの枝に、神話に登場する動物たちがのっかっているのですが、どのコにも神秘的な物語があります。食べても食べても蘇るヤギ、馬より早く走る黄金のイノシシ、躊躇する者という名のシカ。指さしているのは、女神フレイヤのネコetc.

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それから、人間の寿命を決める運命の女神さま等々。

布に絵を描き、染め、さらに、糸をさすという、果てしない工程を経て作られたるいさんの作品は、あたたかで、やさしくて、なんてかわいい世界。「北欧神話」といえば、漫画『進撃の巨人』やゲームなど、神さまVS巨人のようなバトル世界というか、戦闘のイメージが強いけれど、じつはこんなにほのぼの、かわいい世界もあるんです。北欧の自然の色や空気感、北欧の幸福感もちゃんと表現してくださったことが本当に嬉しかったです。

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なんといっても、私が知りたかったのは、どうして、「糸をさす」という表現を選んだの?ということ。「糸」でひと針、ひと針・・・。

質問すると、るいさん、ご自身のアートの始まりや制作過程のことなど、丁寧にお話ししてくださいました。同じ緑色の糸でも濃い緑、淡い緑と色味を変えたり、同じ色でも、糸の太い細い、さす本数を変えて表現しているという制作秘話には感動しちゃいました。パッと見ただけではわかりません。トークのあと、目を近づけて、じーっと見つめる人が続出!

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布の絵本も素敵でした。北欧神話は時系列に並んでなくて、さまざまな物語が集まって、1つの神話になっているのですが、エピソードの1つ「雷神トールの妻シブが丸坊主にされる事件」が、かわいい、かわいいアートになっていました。物語の中でいちばん印象に残ったから、選んだそう。

上の写真は、ノルウェーのオスロ市庁舎前にある北欧神話の木彫り壁画。雷神トールが空を駆けるようすが彫られています。皆さまに、旅したときの写真を見せながら、トールがどんな神さまなのかを話しました。

「ほかにも、いろんな物語が絵本にできるよね、第2弾、第3弾が楽しみね!」とトークは締めくくられました。

蘇るヤギの話とか、若返りのリンゴをもつ女神イズンの話とか、トールが巨人にだまされる話とか、、、。

新しい楽しみが生まれた時間。

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るいさん、いらしてくださった皆さま、ありがとうございました

いい1日でした。

主催のCASEギャラリーYukawaさん、ありがとうございました。


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※写真はるいさんのだんな様の撮影です。

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2018年12月27日 (木)

2018.5水墨画作品の展示報告inチェコ・ノヴァフラディ城

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今年、嬉しかったことの1つ。

墨で描いた彼岸花、作品名「Lycolis(彼岸花)」が、ベラ・チャスラフスカさんを追悼して行われた「日本を愛してくれてありがとう展」に展示されました。チャスラフスカさんは、1964年の東京オリンピックの金メダリスト、チェコスロバキアの体操選手です。

◎展覧会:ベラ・チャスラフスカさん追悼「日本を愛してくれてありがとう展」
◎作品名「Lycoris(彼岸花)」(写真の左側)
◎会場:ノヴァフラディ城(リトミシェル)
◎会期:2018510日~31
◎主催:ベラ・チャフラスカ基金会
※写真協力:AIACC国際書道文化発展協議会

チャスラフスカさんってどんな人?出会いは? 詳しくは杉原梨江子オフィシャルサイトを読んでください。

http://rieko-sugihara.com/information/2018510-31Suibokuga%20inVera_Lycoris.html

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2018年6月18日 (月)

2018.6.19FMラジオ出演ブック・アンソロジー第12回ヤグルマギク

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【ラジオ出演のお知らせ】


月に1度、新刊『花のシンボル事典』から季節の花を紹介するラジオ。

6月は「ヤグルマギク」についてお話しします。

シンボルは「永遠の愛」。

1922年に、ツタンカーメンの墓が発見されたとき、彼の胸元に置かれた小さな花輪の中に、ヤグルマギクの花も入っていました。しかも、その花びらには、かすかに青色が残ていた、と伝えられています。18歳でこの世を去った若きファラオを王妃さまとのエピソードをお楽しみください

◎番組名
エフエムふくやま・本の情報「ブック・アンソロジー」
<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
◎放送日:毎月・第3火曜日の19時35分から。

※動画ラジオ、YouTubeでお聴きください。
第12回 2018年6月19日(火)放送
https://www.youtube.com/watch?v=6i02I7MO3tw

ツタンカーメンと王妃のエピソードは、私の本『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』の序文でも紹介しています。ぜひご覧くださいネ

★ヤグルマギク(キク科・1年草)
学名:Cenaurea cyanus
シンボル:永遠の愛、誠実、死と再生
裏シンボル:独身のみじめさ

 

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2018年5月 8日 (火)

2018.5.15FMラジオ出演ブック・アンソロジー第11回ボタン

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【ラジオ出演のお知らせ】

月に1度、新刊『花のシンボル事典』から季節の花を紹介するラジオ。

5月は「ボタン」についてお話しします。

シンボルは「冨と豊穣」。古代から花の王様として、成功と出世とをもたらす花といわれてきたボタンのエピソードをお楽しみください

◎番組名
エフエムふくやま・本の情報「ブック・アンソロジー」
<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
◎放送日:毎月・第3火曜日の19時35分から。

※動画ラジオ、YouTubeでお聴きください。
第11回 2018年5月15日(火)放送

※私の本『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』200ページもあわせてご覧くださいネ

★ボタン(ボタン科・落葉低木)
学名:Paeonia suffruticosa
シンボル:富貴、最高の美人、権威
裏シンボル:日本男児

 

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2018年4月16日 (月)

2018.4.17FMラジオ出演ブック・アンソロジー第10回スミレ

【ラジオ出演のお知らせ】

月に1度、新刊『花のシンボル事典』から季節の花を紹介するラジオ。

4月は「スミレ」についてお話ししました。

この小さく、可憐な花を愛した人物は、あのナポレオン。その皇后ジョゼフィ―ヌとの恋の物語とともにお楽しみください

番組名
エフエムふくやま・本の情報「ブック・アンソロジー」
<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。

放送日:毎月・第3火曜日の19時35分から。

※動画ラジオ、YouTubeでお聴きください。

第10回 2018年4月17日(火)放送

 

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2018年3月21日 (水)

2018.3.20FMラジオ出演ブック・アンソロジー第9回

【ラジオ出演のお知らせ】

月に1度、新刊『花のシンボル事典』から季節の花を紹介するラジオ。

3月は「サクラ」についてお話ししました


番組名
エフエムふくやま・本の情報「ブック・アンソロジー」
<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。

放送日:毎月・第3火曜日の19時35分から。

※動画ラジオ、YouTubeでお聴きください。

第9回 2018年3月20日(火)放送
https://www.youtube.com/watch?v=Bl33fAeS1BM



 

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